第2093回例会

第2093回例会 (2017年4月17日)


「職業奉仕とは」
クラブ情報委員会  竹原 巖 副委員長

今年度、ロータリー情報として第1回目に「ロータリーを樹木」に例え、第2回目は樹木の根っこにあたる「クラブ奉仕・親睦」、第3回目の今日は樹木の幹にあたる「職業奉仕」についてお話させていただきます。ただ、職業奉仕一つにしても、その成立の歴史過程、奉仕の原理・原則、そして実践論など多岐にわたります。先日のIMの時に深川先生がお話された「職業奉仕」の切り口と、今日は少し違った視点からとらえた「職業奉仕」になるかもしれません。また限られた時間のなかで、私の能力で皆さんに理解していただけるスピーチになるか?不安ですがお話しを進めます。
先週のゲストの方をお招きしての体験例会の時に、「クラブに入会し職業奉仕を学び、そして、実践していく企業は決して倒産することなく、隆々と栄えるということを歴史的に証明できている」と話し、同様に職業奉仕という考え方は、他団体には無いロータリー独自の考えであるとも話しました。
ロータリーに職業奉仕という理念を取り入れたのは、アーサー・フレデリック・シェルドンというロータリアンです。A・F・シェルドンはビジネススクールの経営者で、1908年にシカゴRCに入会し、学校で教えていた経営に対する考え方をロータリークラブにも提唱しました。当時のアメリカ社会の商道徳は乱れ、売主は粗悪品を法外な価格で消費者に売りつけるといった取引が平然と行われていました。今でも東南アジア・中国などの世界の観光地で偽造品や粗悪品を、適正価格の何倍も吊り上げて売られたりしておりますが、当時のアメリカ社会では日常茶飯事の商取引だったようです。
シェルドンはシカゴRCの会員に、適正な取引によって買い手に満足と感謝が生まれ、それが信頼・信用また尊敬となり売主にかえってくる。そして、それによって、それぞれの職業を永続的に発展させることが出来ると説きました。シェルドンのこの考えに、初期ロータリアン達は大いに賛同し、シェルドンスクールで学ぶ人たちも大勢いたようです。そして、1910年、1911年、1913年、1921年の4回にわたり全米ロータリー連合会の集会で、シェルドンは職業奉仕について講演し、参加者より万雷の拍手に包まれたという記録が残っております。
この演説の中で「He profits most who serves his best」(最も多く奉仕するもの最も多く報われる)と言い、「ロータリー宣言」として採択されました。その後、1950年のデトロイトの国際大会で「ロータリーのモットー」として採択され、日本の戦前、戦後のロータリアン達は忠実に、職業奉仕を守り、実行してきたのであります。これが、ロータリーの太い幹となる部分で、ロータリーの基本、原則ともいうべきものです。
1929年10月にアメリカ、ウォール街の株暴落が引き金となり、世界大恐慌が始まりましたが、この時、職業奉仕を真剣に学び実践したロータリアンの会社は、一つも倒産することがなかったと聞いております。
前段として、ロータリーにおける職業奉仕の成立過程や原理についてお話ししましたが、次は職業奉仕の原理を理解して実践している例を挙げて、職業奉仕の理解を深めていただきたいと思います。
職業奉仕という考えは、他団体にないロータリー独自のものということを申し上げましたが、決して、ロータリアンだけが職業奉仕を実践しているわけでなく、ロータリアン以外の多くの経営者も素晴らしい職業奉仕を実践している例がたくさんあります。時間の関係で実践例を挙げませんが、皆さんの周りにも尊敬する方が多数おられると思います。
反対に職業倫理に反した経営によって、経営危機に陥り倒産した企業は、枚挙にいとまがありません。最近の「東芝」然り、かつての苫小牧の「ミートホープ」の食肉偽装、大阪船場の料亭「吉兆」の産地偽装、伊勢神宮の「赤福」の日付偽装など数えきれないほどあります。
職業奉仕フォーラムで、蓑輪会員がご自分の経営する歯科医院についての取り組み「働く本質について考える」というテーマでお話されました。先生はご自身の経営する歯科医院という職業について、真剣に向かい合い考えられているなと感心させられました。また、出村会長のお父上がクラブ在籍中に聞いたお話の中で「ロータリークラブに入って、廻りの人たちから学び、会社を発展させることが出来た」というお話も心に残っております。藤城会員は住宅を作る会社を経営しておりますが、お客様にとってより快適で、できるだけ格安な住宅を提供するために、日々研究・努力され多くの方から信頼と信用を得て、注文が殺到し会社も日々発展させているということも、立派な職業奉仕を実践している成果の現れだと思います。このように私の周りには、クラブ会員の皆様はじめ多くの方が職業奉仕を実践されております。ロータリーでいうところの職業奉仕は、会員相互から学び、それを自分の職場に持ち帰って実践しなさいということなのです。
私がロータリーに入会したのは、24年前の1993年6月です。私が入会した当時のクラブは、会員数が110名を超える市内有数の名門クラブといわれておりました。入会間もなくの7月に、ロータリーを勉強する会があるので入らないかと誘われました。それは「千種会」という会で、土曜日の午後からと、日曜日の午前中に講義があり、講師は中央大学法学部の学部長を務められた「小堀憲介さん」でした。
最初の講義が「職業奉仕」で、そこで「客先、仕入先、同業者、社員など自分を取り巻く、あらゆる人々に対して真心をもって誠実に、倫理観を持って対応することが職業奉仕の根幹にある」と教えを受けました。
鉄と鉄を繋ぐ溶接という作業があり、その溶接部分の内部を超音波で検査し、欠陥がないか確認する検査作業があります。建築施工・検査指針には社内検査を実施し、報告書を提出しなさいと書かれており、業界の役員会で「指針通りに検査を行い、その費用は正当にいただく取り組みを全体でしましょう」と提案したところ、幹部役員から「竹原君、それは理想論だよ!自分で自分の首を絞めるようなものだ」と即否決されました。
私が札幌支部の支部長、また北海道の会長に就任してから、業界の秩序回復と品質向上のための活動、また仕事をシェアー・分け合うということを徹底いたしました。
出村会長がIM懇親会の開会での挨拶の冒頭、深川先生の講演を聞き「亡くなったお父さんが毎日日記をつけており、その最後のページに『共存共栄』と書いてあった」というお話をされました。また、林里紅会員の会社・国際技建も自社で研究開発した技術を、同業他社に公開しているとう言うことも聞きました。同業者を大切にするという考えは、私もまったく同じで、この信念がぶれることなく業界をリードしてまいりました。
昨年、北海道の会長職を退き、同時に全国の理事職も退く予定でしたが、全国の団体は私を残すために理事職を増やして、「品質管理特別委員会」という委員会の委員長職も務めることとなりました。これはマンションの杭データ改ざんや、東洋ゴムによる免振データ不正問題など、建設関連の相次ぐ不祥事に対して、経産省、国交省から私共の業界にも改善通達がありました。この通達に沿って、業界の問題点や課題を抽出し、対策を立てるための委員会です。学会、設計、建設、検査業界などからの代表者に委員として参加してもらい、私が委員長を務めております。倫理規定を定めるなど業界の将来のあるべき姿、方向性を模索中ですが、より良い業界にすることが自分の会社も発展・継続させ、社会に貢献できるとの信念で取り組んでおります。
ロータリーや千種会で、職業奉仕を学ぶことにより、自分の会社と業界のあるべき姿に、自信を持つことが出来たということです。まとまりのないスピーチとなり申し訳ありませんが、職業奉仕に関しての話を終えさせていただきます。