第2114回例会
第2114回例会 (2017年11月6日)
北海道医師会 会長 長瀬 清先生
「日本の患者は世界一幸せである」
本日はこのようなお話をする機会を頂き、有り難うございます。
ただ今、ご紹介頂きました北海道医師会の会長を務めております長瀬と申します。ほかにも、社会福祉協議会、ユニセフ協会、学校保健会、健康づくり財団、在宅ケア事業団体等の会長、理事をさせて頂いております。
ロータリークラブには、多くの方から入会のお誘いを頂きましたが、自分では常々社会奉仕をしているつもりでおりましたので、断り続けてきました。ちょっと思い上がりであったかなと反省しています。
私をご指名下さいました阿部弘先生は、北大医学部の先輩で、学生時代またその後もご指導を頂いた恩師です。先生のご要望にお応え出来るかどうか心配ですが、先生と同じ思いを持っていましたので引き受けました。宜しくお願い致します。
○はじめに
1961(昭36)年、わが国では国民皆保険制度が確立しました。国民皆保険制度は、フランスをはじめ幾つかの国で行われていますが、わが国の制度が最も優れたものとWHO(世界保健機構)をはじめ多くの国々から高く評価されています。世界的に権威あるランセットという米国の医学雑誌が、2012年に日本の国民皆保険制度50周年を祝し、特集号を発刊しました。画期的なことです。ハーバード大学マイケル・ライシュ教授、武見敬三氏らが関わっており、日本の国民皆保険制度の評価と今後の課題が示されています。対戦直後の日本人の平均寿命は約50歳(男性50、女性54)でした。10年後に14歳延び、25年後の1970(昭45)年には、スウェーデンを抜いて世界のトップになりました。経済的にはまだ立ち直っていないときに、です。
◆その要因として
①公衆衛生政策(感染症対策、結核コントロール)
②高い識学率
③食習慣と運動
④経済成長
⑤安定した政治 占領軍GHQの指導による。
◆日本の健康成果
①皆保険と平等性
②医療費抑制 と 医療サービスの質
③高齢化に対応した政策 → 介護保険制度導入
④国民の高い健康水準(塩分制限・降圧剤)
◆課題
①人間の安全保障という理念のもとに構造改革
②政治ガバナンス
③医療の質の確保
○医療制度の歴史
日本の医療制度の始まりは1905(明38)年、八幡製鉄および鐘紡という大企業の従業員対策にはじまり、その後、富国強兵を
目的に様々な制度の改革がなされます。
1922(大11)年、健康保険制度制定
1927(昭2)年、施行
1938(昭13)年、厚生省設置
1947(昭22)年、GHQのもと新医療制度
1961(昭36)年、国民皆保険制度
2000(平12)年、介護保険制度施行
2008(平20)年、後期高齢者医療制度(75歳以上)
◆日本の医療制度の特徴
①国民皆保険制度
②フリーアクセス(健康保険証の提示で、いつでも、どこでも、だれでも受信が可能)
・たとえば英国では、家庭医に登録が必要で、家庭医から専門医、病院を紹介してもらう
現物支給・・・日本の医療は、診察・検査・薬を提供し、国民はその一部を負担。残りは医療者が支払基金・国民保険機構にレセプト請求することとなっている
③自由開業制
④診療報酬2年毎改定(薬価も同じ、介護報酬は3年毎)
⑤医療は非営利性・・・医療周辺は営利 控除対象外消費税
◆アメリカの医療制度・・・欧州諸国の医療制度とも違いがある
・アメリカは民間保険主。
国はメディケア(老人医療)メディケイド(低所得者医療保障)のみ関与。
○日本の医学教育
日本の医療は明治政府の設立、近代化政策で大変換を遂げた。
漢方 → オランダ医学 → ドイツ医学 →戦後アメリカ医学
医学校 大学東校・・・東京大学
京都大学
北海道大学医学部 ・・・1919(大8)年、1926(昭元)年1期生卒業
札幌医科大学 1950(昭25)年
旭川医科大学 1973(昭48)年・・・田中角栄内閣一県一医大構想により設立
戦後医学教育・・・6年生・・・インターン制・・・国家試験
・1968(昭43)年、インターン制廃止
・2004(平16)年~研修制度必修化
・2018(平30)年~専門医制度実施予定
医師数の変遷(人口10万人に対して)
全国 北海道
・1965(昭40)年 110人 90人
・ 現 在 230人 225人
結論として日本医療の特徴は、
1)医療費は欧米先進諸国と比べ、安い
2)日本の医療費支出額はGDPに対して、欧米諸国に比べて少ない
3)日本の国民負担率は、欧米先進国に比べて低い
とお分かりいただけたかと思います。日本の患者さんは恵まれていることを知って頂きたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。