第2319回例会
第2319回例会(2024年2月5日)
「社会福祉法人麦の子会の歩みと里親会」
社会法人 麦の子会 / 札幌 里親会
理事長 北川 聡子 様
社会福祉法人麦の子会は1984年、札幌市東区に学生が設立しました。
私は、学生時代に出会った自閉症の少年がいました。大人や周囲の子どもに対する他害行動や、自分を強く叩く自傷行為がありました。子どもも親御さんも悪くはないのです。でも、本人が大変になるような状況にどうしてなったのかと思いました。職員の方から彼のこれまでの苦労を聞かせてもらい、やはり幼児期からのチームでの支援や、良い環境が必要であることを思いました。行動は激しかったのですが、彼の眼はとても純粋で賢さを感じました。そして私は「お前は信頼に値するのか」と見つめられている気がしました。
私はこれまでの仕事で辛くてやめたいと思っても、いつも彼の眼差しと「信頼できる人なのか」ということを思い出し「彼を裏切ってはいけない」と踏みとどまることができました。今ここに立っているのは彼のおかげです。
こうしてむぎのこが始まりましたが、お金はない、スキルもない、専門性もない、あるのは若さだけでした。このままでいけないと思い、北欧の福祉を学びに行きました。そこで出会ったノルウェーのオスロ市の市長さんは、手足に障害があり義足をつけていました。市長さんが「私は、障害のある方を真ん中にした市政を作ってきたのよ。困り感の高い人へのサポートはみんなが住みやすくなるのよ。」「日本は障害があったら、街を離れたところに施設があるでしょう」「日本でも障害のある方々を真ん中に置いた街づくり頑張ってくださいね」と肩をたたかれました。それから私も支援の方向性が見えてきました。そしておかげさまで無認可から13年後、社会福祉法人として認可され今に至っています。
家族への心理サポートの必要性を感じて、40代に入りアメリカの大学院で心理学を学びました。そこでは、早期の幼児に支援をしているセンターのベスさんお会いしました。ベスさんは車いすに乗っているSWでした。そして「障害児に対する支援は、障害を治すという発想であって、障害のある自分自身が存在してはいけないのではないかと支援を受けるたびに思ってしまったのです。自己肯定感が下がり回復するのに何年も心理カウンセリングを受けました。」とおっしゃっていました。私は、障害のある子どもへの支援は、その子自身を肯定し生活を豊かにするためにあることを教えられました。障害のある子どももない子どもも、同じ日本の大切な子どもです。
子ども家庭庁ができてインクルージョンの大切さが提唱されています。障害のある子ども、ない子どもも同じ日本の子どもとして大切に育てられるために、イタリアなどのインクルーシブが進んだ国からこれからも学んできたいと思っています。
札幌市里親会では、何らかの事情で家族と住めなくなった子どもたちを自分の家庭に迎え入れ育てている里親さんの集まりです。「みんなで育てる・共に育つ」をミッションに、子どもを真ん中に、200組以上の里親さんが支えあって子育てをしています。子どもはいろいろな事情を抱えていますので、いつも子どもの気持ちに寄り添っていくことを心がけていますが、時として悩みがあってもだれにでも相談するわけにはいきません。そこで、同じ里親同士気持ちを出し合って子育てをする場としてサロン活動などを行っています。また養護施設の里親専門のソーシャルワーカーやフォスタリング機関、児童相談所と連携して子育てを行っています。
親御さんと一緒に暮らせないなど、いろいろな環境にいる子どもたちの幸せを求めて、里親会はたくさんの関係者と手をつないで歩んでまいります。よろしくお願いいたします。