第4回クラブフォーラム

第2251回例会(2022年3月28日)

「帰国報告レポート」
覚知 頌春 氏 卓話

2018年の9月から2020年の8月まで、私はロータリー財団の地区補助金学友奨学生として、ドイツのクリスティアン=アルブレヒト大学キールに客員研究員として滞在した。私の博士論文のテーマは、低地ドイツ語の動詞統語論であり、今回の滞在は博士論文執筆のためである。
低地ドイツ語は、北ドイツで話される地域言語であり、ハンザ同盟の共通語にさかのぼる、長い歴史を持つ言語である。キール大学は、ミヒャエル=エルメンターラー教授率いる低地ドイツ語部門が存在し、この言語にかかわる研究プロジェクトや様々な講義が行われていることもあり、低地ドイツ語を研究するのに最適である。
私は、現地でアンケート調査・インタヴュー調査を行い、関連する授業に積極的に参加した。シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の各地に存在する、低地ドイツ語関連の集会にも積極的に参加し、大学外での低地ドイツ語の状況も知ることができた。その他滞在中、マールブルクで開かれた
学会への2度の参加、フェヒタで開かれた若手研究者コロキウムでの発表、ルクセンブルクでの夏期講座への参加、マインツ大学の言語学研究会での発表、2本の論文の執筆を行い、研究者として価値のある経験を多く積むことができた。このような素晴らしい機会を与えていただき、ロータリー財団の方々には深く感謝している。
研究滞在の間、たくさんの低地ドイツ語話者の方々と知り合うことができた。彼らはネイティブで低地ドイツ語を話す人がほとんどだが、低地ドイツ語を書くとなると、うまく書けない人が多いようであり、また、ある言い方をどういうときにするのかを説明できる人は少ない印象を受けた。これは当然なことで、私自身も北海道方言で書ける自信は全くないし、どういうときに方言的な特徴が出るか説明できる自信はない。自らの話す言葉について説明したり、それで書いたりするという行為は、専門的な研究を通して、辞書や文法などを確立することによってはじめて可能になる。私の研究も、最終的にその研究成果が、文法書などの形で低地ドイツ語話者に還元されると信じながら、現在博士論文の執筆を進めている。


2019年6月、ハンブルクのロータリー国際大会で、
偶然出会ったキール・アイダークラブのヘスラーさんと