第2354回例会
第2354回例会(2025年1月27日)
「人口減少社会における福祉的経営のあり方」
社会福祉法人ゆうゆう理事長/北海道医療大学客員教授 大原 裕介 様
○社会福祉法人ゆうゆうの事業展開
社会福祉法人ゆうゆうは、北海道医療大学学生ボランティアセンターが前身となっているため当別町の法人本部を設置している。北海道の5市町村で事業を実施しているなかで、苫小牧市では、図書館と福祉を融合させた事業を展開している。前例主義の図書館のあるべきルールを例えば、にぎやかな図書なんでも良いと変えることによって、これまでの図書館を利用する市民に加えて新たな利用者層が増えたと同時に、これまでの静かな図書館よりも心地よいという声も聞かれた。全国的に図書館の利用者は減る中で、図書館が社会的に孤立をしている方様々な事業を抱えたこともたちの居場所として再構築できる可能性が考える。
現在、法人として注力しているのは和寒町での事業である。人口3,000人規模の小さなまちで特別養護老人ホーム建て替えを中核に人口減少著しい自治体のサスティナブルなまちづくりに着手している。
北海道での事業展開のほかに、東京大学のリノベーションされた工学部の建物の一部で学生と教職員向けの学食事業を実施している。著名な建築家である隈研吾さんがリノベーションの設定をされており、ご縁から店舗についても隈研吾さんに設計監修をお願いすることができた。東京大学で飲食事業を展開した理由に、①自社農園のお米や野菜を加工し販売する6時か事業の確立、②収益事業(課税事業)による事業実施で得た利益を福祉事業に還元する、③東京大学の学生たちとのリクルーティング機能の構築の3つをビジョンとして事業を設計した。オープンして間もなく、コロナの緊急事態宣言が発令され、厳しい経営状況ではあったが、東京大学の学生が卒後看護師として入職するなどの効果も一定達成されたと評価している。
○社会福祉法人ゆうゆうにおける人材戦略
少子化に伴い全産業の担い手不足、人材確保は非常に厳しい状況にあるなかで、福祉業界は慢性的な人材不足に陥っている。対人援助職である福祉分野においては経営の最重要課題と言える。新卒採用が苦慮している時代のなかで、ゆうゆうは今年度45名の新卒エントリーがあった。北海道の福祉系大学だけではなく、全国各地から応募が来ている状態にある。10年ほど採用活動に注力してきたなかで、学歴を持ち出すものではないが、東京大学や大阪大学、慶應義塾大学の卒業生たちも入職者として一部存在する。また特徴的なのは、彼らも含め、福祉分野を専門的に学んでいない大学生たちの入職者が一定数いることである。東日本大震災以降、社会課題に自分もアサインしたいという若者たちに訴求するために、例えば、「消滅する自治体を救う」などのキャッチーなフレーズを掲げ、そうした思考を持つ若者たちをリクルートしてきた。私たちの業界は、国家ライセンスを取得した若者の活躍もさることながら、様々な分野の若者が活躍するフィールドを提案している。
また、新卒採用時のアプローチでは昨今、「時すでに遅し」の感は否めないため、アルバイトやインターンシップなど早期に学生との接点を持つ機会を創設し、ゆうゆうに対する「ファン」層を獲得するシステムを構築している。早期アプローチの最も効果的なインパクトは、年齢の近い若手従事者がどのような働き方をしているのか?という点が学生たちの重要なポイントとなるため、経営層や人事部だけの取り組みでは限界があり、法人全体としての意識情勢と取り組みが不可欠である。この点においては、私たちも課題があることは否めず、今後のの経営の重要なアジェンダとしている。
そして、新たな採用だけではなく、職場の定着率を高めることも重要な視点である。グラフにある通り、福祉業界の離職率は16%と他業種と比べると高い傾向にある。特に3年未満の離職率は高い。ゆうゆうの離職率は昨年度ベースで6%であり、全国平均よりも低いが改善しなくてはならないアジェンダは山積している。一人ひとりの意思を尊重した多様な生き方を大切にすることは当然ながら重要なため、「抱き込む」定着はもってのほかではあるが、自らが活力を持って働き続けたいと思う環境づくりとシステム構築が重要である。