第2272回例会
第2272回例会(2022年10月17日)
「私の仕事」
北海道医療大学 名誉教授
千葉 逸朗 氏 卓話
この度、蓑輪隆宏会長先生からのご推薦で、ロータリークラブでお話する機会を頂きました。ありがとうございます。すでに退職しておりますが、現役時代に研究の一環として口腔がん予防活動のため、スリ・ランカへ行っておりました。実は、母校であります北海道大学の口腔外科におりました頃に、スリ・ランカの口腔外科医がたまたま研修のために訪問して参りました。彼とすすきのなどで飲み、語っているうちに、現地では噛みタバコの習慣があり、それによって口腔がんが多発していることを知りました。当初は基礎研究の材料にと思って現地でサンプルなどを採取しておりましたが、大学院時代の恩師、小林 博先生から、「そんなにがんが多いのなら、予防をしなくてはいかん。」との叱責を受け、予防活動を行うこととなりました。ただ、言葉の壁のある中で人の習慣はなかなか変えることが難しく、困難を極めましたが、(株)ロッテと共同で口腔がん予防用のガムを開発して、言葉も少しずつ覚え、現地の医師の協力も得て、効果をあげました。文部科学省の科学研究費もたくさん頂き、充実した研究ができました。
現在のスリ・ランカはさまざまな面で困難を極めています。経済的にはデフォルトとなり、破綻状態にあります。国民の生活は困難を極め、臓器売買なども横行しています。リーダーの見識の無さが国の行く末、国民の未来に大きな影響をもたらすのはよく経験するところです。今回のお話では、現場で活躍なさっておられる方から医療関係を中心にさまざまなデータを頂きましたので、ご紹介できればと思います。
海外だけでなく、北海道医療大学が立地する当別町へも貢献しなくてはと思い、当別町の子供たちのむし歯予防のため、こども園、小学校、中学校でのフッ化物洗口事業を行いました。また、 医療系の学生教育、特に医療コミュニケーション教育のために模擬患者(Simulated Patients: SP)を養成しました。現在でも 40 人程度の方々が大学での医療人教育に貢献して下さっています。 医療面接は、頭でわかっていても身体や口が動かないと何の役にも立ちません。SP を前に学生の 手足が震え、汗をかいているのを見ると、育ててよかったと思います。今年、特定非営利活動法人「SPフロンティア北海道」を立ち上げ、さらに安定した活動ができるようになりました。
現役時代は決して無事だったわけではありません。赴任直後から痛風、バセドー病、痔などを患い、平成26年には僧帽弁閉鎖不全症となり、一世一代の大手術を受けて、死の淵から生き返りました。このような経験をすると、命の有難さを実感致します。人生観が変わります。「人のため」と思ってやってきた学生教育、国際貢献、地域貢献など、人々の幸せに繋がることが、結局自分の喜びにもなっていることに気が付きました。また、頂いた命をもっと有意義に使おうと思い始めました。ロータリークラブの皆様も、似たような「何か」の想いで活動なさっておられるのかなとも思います。時間やお金に余裕があるからといって皆様のような活動につながるとは思えません。これからも、そのモチベーションを大切になさって頂ければと存じます。
末尾になりましたが、皆様におかれましては、健康にご留意され、益々ご活躍下さいますよう、 ご祈念申し上げます。
どうもありがとうございました。
(原文のまま掲載)