第2183回例会
第2183回例会(2019年8月19日)
「実践 職業奉仕
〜そこから得たもの 感じたもの〜」
RI2510 地区 2016-19
地区職業奉仕委員長
玉井 清治 氏
(函館亀田 RC)
札幌北ロータリークラブの皆様!
この度も職業奉仕フォーラムにお招きいただき、誠にありがとうございます。
まだまだ私のような未熟者が職業奉仕の実践で成功したことはありませんので、失敗談という形でお話しさせていただきます。
まず、私はクラブに入会して20年目になります。その中で退会届けを3回も出した経緯がある「落ちこぼれロータリアン」です。
私はカレーが大好きです。
数年間継続していた社会奉仕事業「子供達とのじゃがいも堀り」が当クラブの自慢の奉仕事業のひとつでした。
児童養護施設の子供達を誘い、クラブの会員家族とともに半日「じゃがいも堀り」を体験し、その場でじゃがいもを塩煮して函館産塩辛とバターで一緒に食べるといった事業です。
この施設の子供達は親がいない子や、事情があって親と一緒に暮らすことの出来ない子供達です。
この事業には私なりに複雑な思いがありました。
親がいない子供達の目の前で私たちロータリアンが家族で笑いながら芋掘りをする姿を子供達はどう感じているのだろう?
決して良い気分ではないはずです。
それと、今の子供達は芋の塩煮より、断然カレーライスだろう!そう思っていました。
社会奉仕委員長が「例年どおり変わらず奉仕事業を行う」と発表した際、会長である私は
「だめです!今年は奉仕事業に家族を呼ばないし、芋の塩煮ではなくカレーライスにする。」と言い切りました。
すると、社会奉仕委員長のみならず五大奉仕委員長が真っ向から反対。
それを会長権限だと押し切り、内容変更をすることにしました。
日程が近くなり、児童養護施設へ挨拶に社会奉仕委員長と幹事と共に伺った際のことです。
「喜んでください!今年は芋の塩煮ではなくカレーライスですよ!それと、芋掘りには家族は参加させません。」
そう施設長に伝えると、彼は困った顔をしました。
「お願いです。例年どおりになりませんでしょうか?」
私は一瞬信じられませんでした。
「なぜですか?」の私の問いに彼は
「会長さん。あなたは幸せな人生を歩んでこられたのでしょう。カレーライスという料理はこの施設では毎週子供達に食べさせています。何故なら安価でルーを伸ばしに伸ばしてお腹いっぱい食べさせることが出来るからです。子供達はカレーにはうんざり感じています。」
「この子供達は生きていく過程の中で必ず親子の羨ましさを感じることがあるでしょう。そのことを体感することもこの子達には必要なのです。クラブのご家族は是非、一緒に参加してください」このように話されました。
私は目の前が真っ白になり気持ちはドン底まで落ち込みました。
なぜなら私の考えていた「奉仕」と受け入れる方々の思っている「奉仕」に大きな乖離があったからです。
「相手の立場に立って」考えたことが、結果的に自分の思慮が足りなかったという反省点はロータリアンの奉仕活動ばかりでなく日常の中にもあります。
それと、もうひとつの反省点は、クラブ会長は何でもできると勘違いしていたことです。
クラブ会長は執行機関のトップとしてはクラブの象徴たる地位にありますが、何ら実権はないということを私は知りませんでした。
数日後、五大奉仕委員長や幹事・クラブのみんなが、この落ち込んでいる会長を心から励ましてくれました。急遽、通常通りの「じゃがいもの塩煮」に変更して晴天のもと、奉仕事業は大成功に終わりました。
こういう施設の子供達は、とかく「非行」にはしる傾向にあります。
こういった子供達に冗談を言いながら、笑いながら、時には相撲をとりながら過ごすことで、少しでも非行防止につながることをクラブ全員願っています。
帰り間際に子供達が「おじさん!また来年ね~」と言った言葉が印象的でした。
「可愛そうだ!」と思って実施する奉仕事業はダメだと思います。恵む奉仕はいかがなものでしょう。
「食べさせてあげる」ではなく「一緒に楽しく食べる」の気持ちを持ち、彼等彼女たちの悩み、喜び、悲しみ、そういったものを全部自身に吸収しながら、適切な施策を打って行く。
つまり、奉仕をしながら自己改善を同時に進める。
また、お金を出すことも大事ではありますが、お金を出す前にそういう腹構えを持ってクラブ内全員で奉仕事業に取り組んで行かねばなりません。
このようなことは会社経営でも同じことで、自分が何の不思議にも思っていない確信ある方向が実は現実には真逆なこともたくさんあり得るということ。
それを教えてくれるのがロータリークラブであり、そこが自己研鑽の場であることは間違いありません。
例会出席を通じて同僚ロータリアンに学ぶ姿勢をもって、その自己改善のエネルギーを無限に地域社会に放流しなければならない。
これぞ!ロータリーだと思います。
「インスピレーションのアレン」と呼ばれた5代目RI会長アレン・アルバートの1913年バッファロー大会での講演演説「実力の涵養と人格の形成がロータリーの目的である」という言葉を思い出しました。身にしみている毎日です。
クラブの例会は間違いなく「ロータリーの心を磨く」道場であることは確かで、職業奉仕の実践の場でもあるでしょう。
この度の2019年規定審議会でも例会と奉仕事業を同レベルにて扱われる提案事項がいくつかありました。
また、一業一会員制の考えを否定するものもありました。変革するロータリーのなかで、今後、クラブとしてどう向き合っていくか本気で考えなければならない時期に来ています。
ご清聴、誠にありがとうございました。