第2111回例会
第2111回例会 (2017年10月2日)
米山記念奨学委員会 米山奨学生 王 册さん
「留学の限界」
私達の留学には時間と知識という二つの壁があります。時間の壁とは、一生留学する訳にはいかないため、私達留学生が常に時間に追われているということです。そして知識の壁とは、留学先での膨大な知識を目の前にしてその全てを学びたいと強く願いながらも、実際には学ぶことを選択しなければいけない、という壁です。
そこで留学生は一つ共通の課題を持っています。それは、限られた時間をいかに有効に利用して「何を勉強して帰るべきか」です。日本に諸外国から来ている留学生のみならず、欧米先進国に勉強に出かけている日本人留学生も同じであります。
多くの留学生は指導教官のアドバイスを受けて、的確な目標を立てて成果を収めることになりますが、私のように欲張りしすぎでいろんなことに手を出して、結果すべてが中途半端になってしまう留学生も少なくはないはずであります。
思うには、数年間の留学期間のみで相手国の制度を完璧に理解するのは、無謀な挑戦と言っても過言ではありません。例えば法律を勉強していた時に、民法の一つの理論を勉強するには、関係条文のみならず、判例研究もしなければならず、法哲学的または法社会学的検討も不可欠であり、ひいては制度ができた社会背景や日本文化に関する考察も必要になります。勉強すべきことが多すぎるため、常に「限界」を感じていました。
ごく僅かではありますが、中途半端な知識しか身についていない留学生が帰国すると、よく「日本では○○という素晴らしい制度があり、中国に即導入しなければいけない」といい、改革の急先鋒を演じて自己存在をアピールします。結果、十分な考察を伴っていない誤解された日本の制度紹介によって、中国の社会背景を無視した改革が引き起こされてしまい、制度自体の整合性を取れず最終的には空中分解することがあります。残念なことにこれらの留学生が、学術を介して日中の架け橋になるためには、もっと貪欲に知識を習得しなければならないのでしょう。
自分に残された時間は僅かではありますが、時間という壁を乗り越え、1つでも多くの知識を獲得しようと思います。その知識が「留学の限界」を超えるための石橋を作る土台になってくれると信じています。